「善哉酒造」
松本帰省のたびに頭をよぎり、何度も足を運んできた「善哉(よいかな)酒造」。
私たちにとって、“また帰りたくなる酒造”です。
そんな存在があるって、すごいでしょう? 長くなりますが、私たちが愛してやまない理由をちょっと紹介させてください。
松本駅から徒歩10分。○○のあたりで、情報量の多いこの看板を見つけてください。
情報量が多いね。賑やかだね。よく見て、下のほう。
街の至るところに湧水のある松本ですが、そのひとつ「女鳥羽(めとば)の泉」は、今回お邪魔する善哉酒造の仕込み水であり、酒造に併設されているみんなの水汲みスポットなのです(善哉酒造の看板ではありませんが、これを目印にして大丈夫)。
これが善哉酒造。大きな看板などはないので最初は戸惑うかもしれません。この、左側の茂み…
これが女鳥羽の泉。じょうごがぶらさがっていますね。ここの水は自由に汲み放題で、街の人がペットボトルやポリタンクを持ってやってきます。その光景に最初はびっくりしたけど、ここの人たちにとっては当たり前のことみたい。
やや小ぶりな杉玉です。しめ縄がついているパターンはあまりみたことがない。
おばあちゃんの家のような、広い土間にびっしりと並んだ商品、賞状、などなど。このごちゃっと感に一気にリラックスできます。
善哉酒造の商品がずらり。
ちなみに私たちは、善哉酒造と呼んだことはほぼなく…「女鳥羽行く?」「女鳥羽のお酒買っていこう」と、女鳥羽(めとば)の愛称で呼んでいます。
そしてこの名物女将です。この方に会うために通っているといっても過言ではありません。きっと善哉酒造のファンにはそんな人が多いはず。気さくで、ほがらかで、優しくて、でも自分たちの酒造りには誇りと自信を持っている。
じゃん! 善哉酒造がすごいのはこれ。全部試飲できます。「いらっしゃーい、どうぞどうぞ、座って、ゆっくりしてって」とおちょこが出されます。試飲ができる酒造はたくさんありますが、ここまで落ち着いて飲める場所はなかなかないですよ。
この日は、私たちの前に一人の男性がきていました。2回目の来店で、「もう、(ここが)松本に来る目的になってるんですよね」と3本のお酒を購入。「ぜひ熱燗のお話は聞いたほうがいいですよ!」という言葉を残して。
こうやってお母さんを囲んで、他のお客さんと一緒におしべりをするのも楽しいんです。
説明をしながら順番にお酒をすすめてくれます。
「まずはこれね、どう、グイッといけるでしょう?」
この日は、純米吟醸、にごり、山廃仕込み、無濾過原酒、大吟醸、17年ものの古酒などをいただきました。秋になったら新酒も出てくるのかな。
もう、バーッと話しながら次から次へとお酒を注いでくれるので、1本ずつ特徴や味わいをメモすることができず、写真を撮るのが精いっぱい。ぜひ行って飲んでください。おいしくて楽しいから。
酒造りについても詳しく説明してくれます。ただ、日本酒づくりって難しくて何度聞いても覚えられないの…ごめんなさい…。
ということで、ここからは印象的だったエピソードを抜粋してお伝えします。
おしゃべりしながら試飲スタート
この日は、私たちの前に一人の男性がきていました。2回目の来店で、「もう、(ここが)松本に来る目的になってるんですよね」と3本のお酒を購入。「ぜひ熱燗のお話は聞いたほうがいいですよ!」という言葉を残して。
こうやってお母さんを囲んで、他のお客さんと一緒におしゃべりをするのも楽しいんです。
説明をしながら順番にお酒をすすめてくれます。
「まずはこれね、どう、グイッといけるでしょう?」
この日は、純米吟醸、にごり、山廃仕込み、無濾過原酒、大吟醸、17年ものの古酒などをいただきました。秋になったら新酒も出てくるのかな。
もう、バーッと話しながら次から次へとお酒を注いでくれるので、1本ずつ特徴や味わいをメモすることができず、写真を撮るのが精いっぱい。ぜひ行って飲んでください。おいしくて楽しいから。
酒造りについても詳しく説明してくれます。ただ、日本酒づくりって難しくて何度聞いても覚えられないの…ごめんなさい…。
ということで、ここからは印象的だったエピソードを抜粋してお伝えします。
今年も金賞をいただきました
日本酒にとって品評会というのは、杜氏の評価だけでなくその年の売れ行きを左右する重要な場だそう。善哉酒造も大吟醸を出品し、見事金賞を獲ることができたそうです。
「金賞を獲らないと皆さんの目に触れないのよね、銀賞じゃダメなのよ、仲間内では評価されるんだけどねぇ」とお母さん。
確かに、銀賞を掲げているお酒に出会ったことないですね。そこはシビアなんだな…
突出したお酒は作りたくない
お母さんのご主人、善哉酒造の社長さんは「尖った酒は作りたくない」のだそう。「最近は甘いとか辛いとか、個性の強いお酒が人気でしょ? でもうちはそういうのやりたくないんだって」。
なぜかというと、「酒は料理と一緒に楽しむものだから」。料理と合間って美味しく飲める昔からのお酒にこだわっていきたいんですって。
わかるー!すごくわかるー!!! 流行のお酒ってすごく美味しいけど、疲れちゃって飲み続けられないんですよね。
こちらはそんな善哉酒造らしい1本。いかにも「おさけー!」という感じの辛口で、夫は大変好みだそうです。お母さん曰く「酒飲みが選ぶ酒だね」。
大吟醸みたいだけどお手頃なお酒
「このお酒、大吟醸みたいでしょ? でもね、大吟醸より安いの。なんでだと思う?」
「確かに華やかで大吟醸みたい、なんでですか?」
「米が違うのよ。普通、大吟醸は山田錦を使うんだけど、山田って数が少ないから高くなっちゃうのよね。だから美山錦を使ったんだわ」
「へー!(※)」
「大吟醸みたいなのを飲みたいっていう声があってね。作りは一緒、米が違うだけ、大吟醸みたいだけどおとなしくて飲みやすい酒でしょ?」
「はい、飲みやすくておいしいですねー。私これ好きだ!」
※これ、宅飲みとかで披露したくなるうんちくなのに、「ごめんなさい、僕、(ラベル)見えちゃった、気づいてた」と水を差す夫。もうこの辺りから写真撮影もそっちのけで、お酒とおしゃべりをただ楽しむ人になっている。
お母さんはどのお酒を飲むの?
前から気になっていたのが、「お酒を造る人は、普段どんなお酒を、どんなつまみと飲むのか?」ということ。
聞いてみました。そうしたら、
「私はつまみはいらないの、酒だけ」
と、なんとも男前。
ここに並んでいるお酒の中でいうなら、こちら。
17年ものの古酒です。
「古酒は趣味の域よね、私は大好き。普通の酒よりも寝ているから大人しくて、辛いとか甘いとか突出したところがないのがいいんだわ」
ですよねー。私も古酒の類が好きで、実はこのお酒、前に買ったことがあります。ちびちび楽しんでいました。一人で。
「いやー、僕、古酒は飲まないんですよ」とまた水を差す夫。そう、彼が好まないから私は一人で飲んでいたのです。
そこにお母さんの目が光り、サッと出されたチョコレート。
「いいから、これとちょっと飲んでみ? 3年や4年の古酒とは違うからね」
夫、「えっと、あの、」と戸惑う。
「バランスが絶妙なのよ、これくらい落ち着いた酒だと、喉で流すだけで美味しいの。それだけ酒の味があるのよね。もっと年月が経つと味がなくなっていくの」
「わーすごい、チョコと合う、ウイスキーみたい!」
「チョコと合わせると酒の角が取れて、まろやかさだけが残るでしょ、チーズケーキでも肉でもよく合うの、お酒の味が変わるのよ」
夫もチャレンジしたら
「あ、ほんとだ、よく変わる、すんごいわ」
ほらー、だから美味しいって言ったのに。
教えて!正しい熱燗の飲み方
チョコレートの魔法で古酒も美味しくいただけて、ご機嫌になった夫。どうしても聞きたかったことがあるようです。
「さっきのお兄さんが言ってた熱燗の話ってなんですか?」
「お燗にするときはね、レンジじゃなくてお鍋でやったほうが美味しく飲めるのよ。レンジで温めると大きなコロニーが温まって、隙間の小さなコロニーが温まらないの、だからすぐに冷めちゃう」
「おお、科学の話だ」
「鍋に水入れて、その時点でお酒入れて、じわーっと弱火で炊くの。そしたら芯まで温まって長く飲めるから。ガンガンに炊いちゃダメ。うちの人がね、料亭の燗徳利で飲んだときに『同じ酒なのにあそこのはうまいなー』って言うくらい違うのよ」
やってみます!と写真でお母さんが持っている熱燗用のお酒を3本買った私たち。でも結局、その方法はできず…お酒が進んでから開けると、そのままとかレンジで温めちゃうとか、雑な飲み方になるんですよね。もっと大人にならなければ。次回リベンジしよう。
滞在時間、なんと1時間30分超
さて、すっかりたくさんご馳走になってしまいました。どのお酒も美味しくて、お話も面白くて、この時点で滞在時間が1時間30分超え。お孫さんが様子を伺いにきたりして、流石に長居しすぎました。
「改めて、一番おすすめしたいお酒はどれですか?」と聞いたら、「辛いのが好きな人はこれ、旬なのはこれ」と、ほぼ全部おすすめされてしまいました。私の質問が野暮でした。
「でも一番売れてほしいのはこれよ、金賞とった大吟醸。ただ、数作れないからほどほどに売れたらいいね」
この大吟醸、最初に来た時に買って帰ったなぁ。「特別な時にあけてね」と言われてお正月に飲もうと思ったけど、大晦日に飲み干しちゃったなぁ…つくづく雑だなぁ私たち…
そして、善哉酒造歴たった3年の私が本当におすすめしたいのがこの甘酒。日本酒じゃないのが恐縮です。「これ飲まなくちゃ帰れないよ! この辺では美味しいと言ってもらってるけど、宣伝が下手だから売れないね」と笑うお母さん。
途中でやってきたご近所のおじいさんも、「甘酒もらいにきたよ」と大量に買って行かれました。もともと甘酒が苦手な夫も「これは男でも飲める甘酒」とグイッと飲み干します。
ノンアルコールで小さい子からお年寄り、ドライバーさんも安心。お米の粒が残った優しい甘みの甘酒で、「アイスにかけたり、牛乳と割ったり、あんこと一緒に食べたりしても美味しいよ、お砂糖がわりに煮物に使ってもいいけど、まあ贅沢だね!」
ということで、今回我が家はこの2本(辛口の無濾過原酒と、美山錦の大吟醸みたいなやつ)と、甘酒1本、熱燗用3本をいただきました。
うーん、今回も満足!!
善哉酒造のお酒が飲める松本のお店
最後に、善哉酒造のお酒を置いている飲み屋さんを聞きます。「最近はひとつの酒蔵を置くようなお店はなくなっちゃったんだけどね、この店はうちのお酒しか置いてないのよ」
「炭火焼きだからとっても美味しいし、大将が徹底してるのよね。自分の体力以上は刺さないんですって。雑な仕事はしないのよ。でもね、そのせいなのか私たちが行ったら串が大抵ないのよ! 残ってるものをいただくんだけど、もうちょっと刺せばいいのにねぇ…」
お母さんも太鼓判の「鳥じん」さん。
善哉酒造の後にお邪魔したので、改めて記事にしたいと思います。
さて、善哉酒造のご紹介もそろそろ終わり。かなり長くなってしまいました。
大量に積まれた安曇野産のうり。「これから漬けないといけないのよー、もう大変!」
色々なご近所さんが立ち寄って、やっぱり甘酒を買っていきました。このお母さんとは漬物の話で盛り上がっていたな。
そういえば前に久江さんとお邪魔したときも、漬物のやり方をずっと話していましたね。長野のお母さんは漬物で仲良くなるのかしら。
お見送りをしてくださった後にご近所さんとおしゃべりするお母さん。立ち話ができるご近所さんがたくさんいるって、憧れるなー。
ちなみにお母さんに「ブログで紹介してもいいですか?」と聞いたら「ありがとう、ぜひお願いします」という流れでこんなお話が。
「こうやってたくさん(試飲を)並べてるでしょう、それがどこかで紹介されたのか、飲むだけ飲んで帰る若い人もいるのよ。だからね、1本くらい買ってってちょーだい!って書いといて! お願いね!」
1本と言わず、2本でも3本でも買ってってちょーだい!
私たちからも本当にお願いね!!!!
お店情報
<営業時間>
9:00〜17:00
※事前電話予約で酒蔵見学もできるそうです
<定休日>
不定休
<住所・アクセス>
長野県松本市大手5-4-24
・駅からのアクセス
JR中央本線松本駅からバスで6分(⇒下車徒歩3分)
・車でのアクセス
松本ICから車で11分
駐車場4台あり
<電話番号>
TEL 0263-32-0734
<その他情報>
酒蔵見学:事前の電話予約
予約・お取り置き:可・電話連絡にて受付
支払い方法:現金のみ
試飲:あり・複数種類
公式サイト
http://www.mcci.or.jp/www/yoikana/index.htm