「亀田屋酒造店」
松本インターから約5分にある亀田屋(かめたや)酒造店。かめ“だ”じゃないよ、かめ“た”だよ。
あたりは住宅街でとても静か。車を降りて澄んだ空気を感じると「あー、松本に着いたー」と、一気に気持ちがほぐれるスイッチの場所でもあります。
広い敷地には酒蔵、酒造店、そして見学可能な母屋があり、お酒を買うだけでなくゆっくりと滞在を楽しめるのが亀田屋酒造の大きな魅力。松本をめぐる観光ツアーの立ち寄りスポットにもなっています。
まずは試飲と買い物ができる店舗「酒遊館(しゅゆうかん)」へ。
店内はとても綺麗で、たくさんの商品が並びます。
この日は年内の最終営業日。それを調べてきた私たちのような人が他にもいたようで、「もうお客さんこないと思ったら結構いらっしゃって、びっくりしてるんです」と女将さん。
生酒や原酒が並ぶフリーザー、「しぼりたて」の文字に胸が躍る……果物ならまだしも、どうしてお酒の「しぼりたて」にこんなにワクワクしてしまうのか。酒飲みの性ですかね。
亀田屋酒造は、甘酒や酒粕、スイーツ系の商品も多く、日本酒を飲まない人やドライバーさんも買い物したくなっちゃうはず。義母・久江さんも絶対いくつか買って帰るだろうな。
ということで、早速試飲をさせていただくことにしました。300円でお猪口をひとつ購入すると、7種類のお酒を試飲させてもらえます。使ったお猪口はそのままお持ち帰りOK。
この日はこの7種類。フリーザーにも並んでいるしぼりたての生酒もラインナップされています。
女将さんに説明していただきながら、右から順番にお酒をいただきます。特に印象的だったのが、右2本。フリーザーに入っていたしぼりたて生酒シリーズで、同じ種類でもアルコール度数が違うのです。最初は生酒15%、次に生原酒21%をいただきます。
この21%がすごい。度数の高いお酒を飲んだときの、あのカーッと口いっぱいに広がる感覚は同じなんだけど、鋭さや飲みにくさはまったくなくて、柔らかく、角のない口あたり。
とはいえ強いので、次のお酒を飲んだときにもまだこの21%の風味が残っていました。ちょっと時間を置いたほうがよかったかもね。
「もうね、圧倒的にこの21%が人気なんですよ。特に男性には」と女将さん。
でしょうね……この21%を購入したのですが、夫も大変な気に入りようで、二人であっという間に飲み干してしまいました。えへへ。
亀の世 無濾過生原酒 720ml 税込1,200円。このお値段でこのおもしろい美味しさ。これだから地酒との出会いはたまらない。
飲みやすいお酒を好む人や女性には、こっちのほうがいいかも。
フランスでも人気の、軽やかで華やかな美山錦の純米吟醸。亀田屋酒造店の看板銘柄「アルプス政宗」の純米吟醸中汲み 720ml(税込1,579円)。クイクイいけちゃう系です。「飲んでて飽きないんですよね」と、女将さんも好んでよく飲むのがこのお酒。
女将さんに話を聞いてみた
女将さんにお話を伺いました。
亀田屋酒造店は明治2年に初代亀井半十郎さんが創業。当時村ではアルプスの伏流水を飲んでおり、その頃に井戸を掘りました。現在もこのアルプスの伏流水でお酒を造っていて、ずっと変わらない美味しさを守っているそう。軟水で、お酒の仕上がりが柔らかくなるんですって。だからあの21%の生原酒も度数の割に飲みやすかったのかな。
「昔は村にひとつ酒蔵があって、村の人が飲む分を造っていたんです。長野と新潟の県境にある小谷村から、何人もの蔵人がチームでやってきていたんですよ。新潟は冬、雪深いでしょう? だから仕事がなくて、こっちまで出稼ぎにきていたんです。村中に杜氏がたくさんいました」
それからスキー場ができるようになって、冬の新潟にも雇用が生まれ、蔵人たちは地元に残るようになったそう。現在は、社員として通年在籍する蔵人、そして杜氏が亀田屋の味を守り継いでいます。
「最近は外国の方も本当に増えましたね」
「どちらからいらっしゃるんですか?」
「欧米の方が多いかも。今日はベルギーの方が家族できてくれました。松本駅から薄着で歩いてきた方もいましたよ」
「松本駅から⁉︎ タフだなぁ…(徒歩約1時間)」
やはり日本食に触れて日本酒に興味を持って……という人が多いそう。
「熱燗のやり方がわからないという方がいて。お湯につけることを教えたら、『ようやくやり方がわかった!』とお燗用のお酒をたくさん買って行かれました。嬉しかったですね。
でも、ロシアの人にはよくわからなかったみたいで。『前にSAKEと言われてぬるま湯を飲まされたんだ』と話してました。普段から強いウォッカを飲んでいるから、普通の日本酒だとアルコールを感じないみたいですね(笑)」
そんなことを話していると、また外国の方が。女将さん、英語で試飲と接客をしています。すごい。
亀田屋酒造店の楽しみ方
冒頭でも書いたように、ここ亀田屋酒造店は買い物・試飲のほかに色々な楽しみ方ができます。
(1)毎月恒例の量り売りでレア酒を買ってみる
毎月最終の土日には、タンクから直で瓶に注いで好きなだけ買える量り売りイベントをやっています。一度お邪魔したことがありますが、大きなタンクからラベルなしの瓶に注いでそのままお買い上げ、という体験は新鮮でした。地元の常連さんがたくさんくるのだそう。2019年12月は大吟醸の原酒だったんだって!ひゃー羨ましい!
(2)ハズレなしの地酒ガチャをやってみる
酒遊館の入口に、1回300円で1〜4等のお酒がもらえるガチャガチャがあります。この3年、ガチャガチャはここ亀田屋でしかしていません。
夫は3等の本醸造原酒(720ml)が当たり!
私は4等のカップ酒が当たりました。以前、2等の大吟醸(300ml)を当てたことがあります。1回300円でこれはお得すぎる。いつか1等の純米大吟醸を当ててみたい…!
(3)築130年超の母屋で歴史を感じてみる
他ではなかなか体験できないのが、この母屋見学。明治18年に建てられ、いまも現役です。女将さんに案内していただきました。
杉玉はこの母屋に。秋に新酒ができたばかりだから、まだ緑色!
中に入ると、まず明治時代の写真がずらり。
初荷風景。初荷は年明け最初の出荷のことで、年中無休のお店が多い現代ではまず考えられない、お祭りのようなものだったんですって。
土間も当時と変わらない光景。室内に回ると、
番台には当時の帳簿が。現在のような小売はなく卸がほとんどだったようで、注文量も「一斗」とか。
囲炉裏や調度品もそのままで、当時の暮らしぶりを女将さんが聞かせてくれます。江戸と近代のはざまにあたる明治〜大正時代、あんまり触れたことないから楽しい。
とても綺麗な箱階段。1階は6部屋あって、婚礼などのときにはこの箱階段も移動し、すべての襖を開けて広い部屋にしていたのだそう。現在の建築基準法下ではできない造り。
男子向けのすごろく。当時は嫁ぎ先から出戻った娘やら蔵人やら、総勢30人くらいの大家族暮らしだったそう。「お昼に一斉に蔵人が食事をとるでしょ、すぐにご飯が空っぽになっちゃって、しゃもじでおひつをガンガン叩かれてたんですって(笑)」
男子向けのすごろく。当時は嫁ぎ先から出戻った娘やら蔵人やら、総勢30人くらいの大家族暮らしだったそう。「お昼に一斉に蔵人が食事をとるでしょ、すぐにご飯が空っぽになっちゃって、しゃもじでおひつをガンガン叩かれてたんですって(笑)」
当時の酒造りや暮らしが垣間見られる母屋見学は、酒遊館でお願いすると案内してくれます。ただ他にお客様がいると接客後になるので、時間にゆとりを持って行くのがおすすめ。できれば事前予約をすると確実だそうです(団体は予約必須)。
(4)シーズン限定で酒蔵を見学してみる
私たちはまだしたことがないのですが、非醸造期である5〜8月は酒蔵見学もさせてもらえるそうです。9〜4月は醸造中なので、衛生状態を保つために見学はできません。事前予約が必要とのこと。
はー、今回も楽しんだ楽しんだ。訪れる際はぜひ時間にゆとりを持って、じっくり堪能してみてくださいね。パパッとお酒を買って帰るなんてもったいない場所だから!
お店情報
<営業時間>
9:00〜18:00
※母屋、蔵見学対応時間
<定休日>
お盆期間 年末年始 毎月第3日曜日
<住所・アクセス>
長野県松本市大字島立2748
・車でのアクセス
松本ICから約5分(約2km)
松本城から約15分(約5km)
上高地 沢渡駐車場から約1時間8分(約33km)
<電話番号>
0263-47-1320
(受付時間 9:00~17:00)
<その他情報>
酒蔵見学:5〜8月のみ、事前の電話予約
予約・お取り置き:可・電話連絡にて受付
支払い方法:現金、クレジットカード
試飲:あり・複数種類
公式サイト
https://www.kametaya.com/